#6:バスケットボール選手の脚トレーニング Vol.2

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今回は、ワイドSQを中心とした、姿勢の低さ・粘り強さの養成について、解説していきます。

バスケットボールにおいて、姿勢の低さや粘り強さが必要なことは前回述べた通りです。
低い姿勢になるメリットとして、以下のような点が挙げられます。
1) 重心が落ちてコンタクトに強くなる
2) 動き出しで、地面を強く押せる
3) スタンスが広がり安定性が高まる


低い姿勢を養成する為のトレーニングにおけるポイントは、「強さと柔らかさ」を両立させることです。

強さとは、低い姿勢をキープする筋力です。試合の終盤、疲労が溜まってくると、膝を深く曲げることができず、姿勢が高くなってしまう選手が多く見受けられます。姿勢が高くなると、低い姿勢をとる相手に対してコンタクト局面や動き出しで不利になります。また、それにより、バランスを崩しやすくなるため、結果的にケガに繋がる可能性も高まります。したがって、試合の終盤まで低い姿勢を維持し、集中力を切らさないようにする為には、トレーニングで粘り強さを養成しておく必要があります。

また、低い姿勢づくりにおいて、股関節の柔軟性も重要な要素です。柔軟性が高いほうが、よりリラックスした状態で姿勢をキープできるようになり、それにより腰や膝への負担を軽減させることにもなります。よって、特に腰痛や膝の傷害が多いバスケットボール選手にとっては、股関節の柔軟性を高めておくことは傷害予防の観点からも必須だと言えます。

尚、筋力トレーニングと柔軟性との関係について、「筋力トレーニングを行うと柔軟性が損なわれる」という意見をいまだに耳にしますが、大きな可動域でトレーニングを行うことで、筋力と柔軟性を同時に高めることは可能です。また、ストレッチのみを単独で行うよりも、筋力トレーニングとストレッチを組み合わせて行った方が、より効率的に柔軟性を向上させることができます。

以上のようなことを踏まえ、実践例を以下に紹介します。
今回は、初級段階、つまり、第1回目の記事で取り上げたような、基本となるSQ種目のフォーム習得と基礎的な筋力強化段階を終え、目的を絞った本格的な強化に入る選手に対し、「低い姿勢づくり」にフォーカスしたプログラムの一例です。

≪種目解説≫

【パート1】
①ワイドSQ

ワイドSQ

1) 足幅を左右に広くとって立ち、爪先・膝を外へ向ける。
2) 上体を立てたまま、まっすぐしゃがむ。
≪Point≫
・爪先・膝を同じ方向に向ける。
・お尻を突き出し、上体を過度に前傾させない。

例

②四股

四股

1) 足幅を広くとって構える。
2) 片方の足を挙げ、バランスをとる。
3) 腰を落とし低くしゃがむ。

③深伸脚

深伸脚

≪Point≫
・腰を深く落とす。
・胸を張り、上体を真っ直ぐ保つ。
・膝を曲げている側の踵も接地させる。
・曲げている膝を外に押し広げる。

パート1は、オーソドックスなプログラムです。
バーベルでの負荷をかけた後に、自体重負荷で動きのある四股を続けて行い、粘り強さを強化します。また、内転筋に負荷がかかった直後に深伸脚ストレッチを入れることで、同時に柔軟性向上を狙っています。

【パート2】
①3/4 ワイドSQ

3/4 ワイドSQ

≪Point≫
・ワイドSQから左右どちらかの足を一足分前にずらす。
・上体は正面を向ける。

②四股ステップ

四股ステップQ

四股ステップQ

1) ディスクを持って低く構える。
2) 低い姿勢のまま、片方の足を前方へ小さくステップし、元の位置に戻す。
≪Point≫
・膝の屈伸を使い柔らかく着地させること。
・ステップ幅は一足分程度とし、腰の上下動を大きくする。

③四股ストレッチ

四股ストレッチ

≪Point≫
・両肘で膝を外へと押し広げる。

パート2は、よりバスケットボールに近い動きの種目を選んでいます。3/4ワイドSQは実際のディフェンスのスタンスのように足の位置を前後させることによって左右の負荷を変化させています。四股ステップでは、ピボットやステップ脚のトレーニングをイメージしています。

【パート3】
①帯ダンベルSQ

帯ダンベルSQ

1) 腰に巻いた帯にダンベルを取り付けて台に乗る。
2) 膝をつま先と同じ方向に向けながらしゃがむ。

②ワイドSQ&カール

ワイドSQ&カール

1) ダンベルをもって中腰で構える。
2) カールをすると同時に深くしゃがむ。

※バーベルの場合

バーベルの場合

③股割

股割

≪Point≫
・上体はリラックスさせる。
・柔軟性が低い場合は、ベンチ台の上に座る、枕を入れるなど段階的に行う。

パート3で紹介している帯ダンベルSQは、腰痛選手向けのトレーニングでもあります。脊柱に対して、上方から負荷がかからないため、腰部に対して負荷がかからず、安全に強化できます。したがって、腰痛持ちの選手は、この帯ダンベルSQを脚強化のメイン種目にしてもよいでしょう。

また、例にあげた、ワイドSQ&カールのように、SQによる脚強化に加え、腕・肩のトレーニングを同時に行うことで、全身強化につなげることができます。

尚、上記で説明してきたバーベル種目すべてに共通するポイントは、「重さよりも深さ」を重視することです。したがって、深くしゃがめているか否かが、重量アップの基準になります。

以上が、ワイドSQを中心としたプログラム例です。
次回は、片脚支持力の強化を狙ったスプリットSQやそのバリエーションを解説します。

2017年9月10日
文責:平井 悠斗