JPフィットネス・ストレングス工房
03-3239-8511
JPフィットネス - ストレングス工房 日研ブログ

#5:野球選手のトレーニング Vol.2

| | コメント(0) | トラックバック(0)

 野球選手のトレーニング、第1回目は「投手の上体トレーニング」について、ベンチ・プレスを強化の軸に据えた場合の実践例と考え方などを解説しました。
 今回は、投手の上体トレーニング 第2編として、背面の強化を中心に進めるパターンについて解説します。

■『投手の上体トレーニングの考え方と実践例(2):背面強化編』
 
前回の記事では、「投手にとって、ベンチ・プレスは必要か?」という切り口から、ベンチ・プレスをどのように導入・採用するのか、その基準となる考え方の整理から入り、ベンチ・プレスを行う際の原則を解説しました。
 今回は改めて、投手の上体トレーニングにおけるポイントの整理から入りますが、まずは投球動作そのものの特徴を確認しておきましょう。

pitching phase.JPG

 上の図は、投球動作を各局面(Phase)に分けた模式図です(出典:『肩 その機能と臨床 第4版』信原克哉.医学書院.2012/360頁 図9-17より ※図中の丸はここでは特に関係無し)。
 投球動作は、動作開始からステップ脚の膝が高く上がるところまでのWind up Phase、ステップ脚が完全に接地するまでの間で投球側の腕のテークバックからトップにかけての動作が伴うCocking Phase、ステップ脚が接地したのち投球側の肩関節が最大外旋位(腕がしなった状態)をとり、ボール・リリースに至るまでのAcceleration Phase、そして、ボール・リリース後、腕を振り切って投球動作が完了するまでのFollow-through Phase、以上の4つのPhaseに分けることができます。
 
投球動作は、各々の筋群が適切なタイミングで活動して力を生み出し、エネルギーを伝達し、ボールを加速させる全身運動です。特に下半身が主動となり、軸脚からステップ脚に体重移動させながらエネルギーを生み出し、体幹部を通じて、肩・肘、そして手先へと送られ、リリース時にその速度が最も速くなってボールに力を加えます。一連の動作の中で、固有の筋群だけが働く訳ではなく、その瞬間ごとに必要な筋群がタイミングよく連鎖的に働き、力を出しています。

 
そこで、それらを踏まえた上で、投手の上体トレーニングにおける強化Pointを整理していきましょう。
1)上背部の筋群:広背筋・大円筋・菱形筋・僧帽筋など
 背面には、脊柱の両サイドを走行する脊柱起立筋群という軸となる大筋群がありますが、ここでは上肢の動きに関与する筋群ということで限定的に考えていきます。

lat.JPG

 その中で広背筋が最も重要な役割を担います。上記の写真のように、起始部(筋肉の付着部)が腰背部(腰椎と骨盤)にあり、束のようになって上腕近位部(肩に近い側)の前側に停止(筋肉の付着部)します。つまり、身体の後ろ側から、胴体に沿いながら、捻じれるようにして前側についた状態になっています。
 この構造を頭に入れた上で、次の写真を見てみます。

mer pitch.JPG

 この写真は、Late Cocking PhaseからAcceleration Phaseに切り替わる、肩関節の最大外旋位、つまり腕が最も捻じられた(しなった)瞬間です。この時、広背筋、及び大胸筋はゴムが引き伸ばされたような状態となり、ボール・リリース時には伸ばされたゴムが解き放たれるようにして力を出すことになります。
 また一方、ボール・リリース後は、高速で振り下ろした腕を制御する必要が出てきます。その際にも、上背部の筋群は、その役割を担うことになります。したがって、強く・速く腕を振る為には、それに見合った強靭な上背部の力が必要になってきます。
 強化すべき上背部の筋群は、広背筋の他に、大円筋、菱形筋や僧帽筋などが挙げられます。

2)ローテ―タ―・カフ筋群:棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋
 
いわゆる、肩関節の「インナー・マッスル」と呼ばれる筋群で、肩関節(肩甲上腕関節)を安定化させる役割があります。特に、投球肩障害を防ぐ上で、強化が欠かせない筋群で、並行してトレーニングを行う必要があります。

3)上腕筋群:上腕二頭筋・上腕三頭筋
 
上腕の筋群の強化は見落とされがちですが、特に上腕二頭筋の長頭腱は肩甲骨(関節上結節)についており、ローテ―タ―・カフ筋群と共に、肩関節の安定に関与します。また、肘周りの障害を防ぐ上でも、上腕二頭筋・三頭筋、共に強化しておく必要があります。

4)前腕筋群:屈筋群・円回内筋
 
ボール・リリースの際、最後は指先でボールに力を加えることから、前腕の筋群の強化も欠かせません。また、肘周りの障害予防の観点からも、特に円回内筋などの肘関節内側部の筋群を強化しておくと良いでしょう。

5)柔軟性
 
第1回の記事でも記したように、肩甲骨の可動性を高め、胸椎の伸展可動域、また肩関節の内旋,外旋可動域、前腕部の可動域に至るまで、常に柔らかく、可動性の高い状態を維持することが投手の上体トレーニングを進める上で、重要なPointです。いわば、‟強くて柔らかい”“柔らかくて強い”上体をつくることが、強化のキーワードになります。

 
以上が、投手の上体トレーニングのPointです。このように、投球動作を踏まえて強化するPointを整理すると、前回取り上げたベンチ・プレスなど、上体前面の強化はそれほど重要ではないのでは?という議論になりがちです。それらに関する考え方の整理は、前回の記事で述べてありますので、再度ご確認頂くとして、ここでは、トレーニングの原理・原則の一つである「全面性の原則」に則り、表裏のバランスという観点から、必要であるということは繰り返し述べておきます。

 では、ここから実際のトレーニング例を紹介していきます。今回は、上体背面の強化に絞ったトレーニング・プログラムについてです。個々のエクササイズについては、写真をご参照頂き、またエクササイズの細かい解説はここでは割愛し別の機会に掲載することにします。

program.JPG chap a1.JPG chap a2.JPG chap a3.JPG chap b1.JPG chap b2.JPG

 

 【A】が強化、【B】が調整(柔軟性養成)のプログラム例です。先に述べた通り、強さと柔らかさを両立させることが重要となり【A】【B】の両方を実施すると良いでしょう。
 【A】プログラムに挙げたエクササイズの全てに共通するのは、大きく動かすことを意識することです。なお、その際に、肩周りが力まないようリラックスを心がけながら、必要に応じて反動をうまく使って挙上します。一見、矛盾する表現に聞こえますが、「力を抜きながら力を出す」ことは、投球動作においても大切なことであり、その感覚を体得していくことがトレーニングを行う意義の一つです。
 背面の強化は、下から上に引き上げたり、懸垂やラットプルダウン、アームプルのように引き寄せるようにしたり、また水平に引き付けたりと、様々な動作方向や角度でのエクササイズを織り交ぜると良いでしょう。
 また、アーム・カールのような腕のトレーニングは、単独で座って行うのではなく、写真のように脚の強化(スクワット動作)を絡めながら行うと効率的であり、なおかつ全身強化につなげることができます。
 【B】プログラムにおいては、「しなり」をつくることをテーマとした、反り(胸椎の伸展)系が中心のストレッチ・プログラムの一例です。上体が「しなる」ことは、良いボールを投げる上で必須条件であると同時に、投球障害肩を予防する上でチェック・ポイントの一つになります。

 以上のように、今回は投手の上体トレーニング第2編として、そのPointを整理した上で、背面強化中心のトレーニングを紹介しました。この他に、ローテ―タ―・カフの強化エクササイズや、前腕強化、またストレッチなど、より細かいトレーニングも欠かせません。それらは、次の機会にまた解説します。

2017年8月31日日
文責:鬼頭 祐介

※当サイト内の文章・画像等の内容について、許可なく無断転載、及び複製することは禁止致します。

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: #5:野球選手のトレーニング Vol.2

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.jpf-stk.co.jp/cmt/mt-tb.cgi/234

コメントする