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2017年7月アーカイブ

#3:バスケットボール選手の脚トレーニング Vol.1

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 『Web講座』 第3回目は、平井が担当します。(プロフィールは、こちらより)
 担当テーマは、バスケットボール選手のトレーニングについて、連載していく予定です。

■バスケットボール選手の脚トレーニング
 バスケットボール選手のトレーニングを考えるにあたり、まず1回目は「脚力」について取り上げたいと思います。
 バスケットボールにおける「脚力」を我々はどのように捉えておけばよいでしょうか?30年以上も前に書かれた吉井四郎氏の『バスケットボール指導全書』(全3巻/大修館書店.1986)にその記載があります。

 “プレーの経験年数と平行して発達するバスケットボールの基礎的な能力があるならば、(中略)私は、それは「脚力」であると考えている。”(全書1,p.11)
 “「脚力」とは、ストップし、方向転換し、ピボットする時に主として使用される筋力である。”(同,p.12)
 “ここで意味する「脚力」とは動きの変化するところの速さ、鋭さを求めることによって発達するものを意味し、動きの変化における「クイックネス」の基礎となる力を意味するものである。”(同p,13)

 『バスケットボール指導全書』は、コーチング理論や実践的な練習方法、戦術などが詳細に記載されており、指導者のバイブルと言っても過言ではありません。類書(写真1)においても「脚力」に関して様々に記述されていますが、『バスケットボール指導全書』以上の内容のものは見当たらないというのが私の感想です。

 

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 では現代において、「脚力」を鍛えるために現場ではどのようなアプローチがなされているのでしょうか。
 私は現在、母校である筑波大学の女子バスケットボール部(2014年〜現在)など、大学・高校の男女チームを指導していますが、これまでにも筑波大学男子バスケットボール部(2010年〜2015年)や社会人男子のトップチームを含め、様々なカテゴリーの選手指導に携わってきました。その中でも、特に小中学生を対象としたbjアカデミージュニアユース(2015年〜2017年)での約3年間の指導経験が大きな財産となっています。
 これらのチームの選手・指導者を通じて見聞きした限り、「脚力」の鍛え方は指導者によって異なっているようです。例えば、バスケットボールの練習そのもので鍛えたり、自体重負荷で強化したりする方法など、様々なアプローチが見られます。
 私のこれまでの指導経験から言うと、特にジュニア世代のうちから自体重負荷でのトレーニングを実施しておくことが重要だと考えています。なぜなら、この時期にトレーニングを習慣化し基本の姿勢を身につけておくことで、高校入学後にバーベルやダンベルを用いた本格的なトレーニングにスムースに移行できるというメリットがあるからです。また、この時期は走り込みによっても「脚力」が大きく向上するため、トレーニングとの相乗効果により、さらに飛躍的な伸びが期待できます。

 また、ケガの予防という観点からもトレーニングは必要だと考えられます。
 バスケットボールは競技特性上、攻守の切り替えが激しく、空中でのコンタクト局面も多いため、足関節や膝関節の傷害が多く発生する競技です。これらの傷害を予防するために、足関節や股関節の柔軟性向上、膝周囲の筋群の強化を行うことは必要不可欠です。
 さらに近年は、24秒クロックなどのルール改正に伴い試合展開が速くなり、運動強度や技術レベルが上がっています。鍛えられていない弱い身体に負荷の高い練習・試合を重ねていけば、傷害の発生リスクが高くなることは明らかです。したがって、トレーニングによって基礎筋力や柔軟性を高め、正しい動作を習得することで、ケガの予防に繋げられます。

 それでは、本格的なトレーニングを高校生から始めるにあたり、実際のトレーニング・プログラムを例にどのように進めていけばよいか、具体的に解説していきます。
 今回は、高校生1年生などトレーニングの初期段階をモデルとし、採用した種目の目的や進め方について説明します。

 

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 このプログラムの構成は、スクワット(以下SQ)とそのセット間に、自体重エクササイズやストレッチなどを組み合わせています。
 そのようにすることで、筋力強化と同時に、動きづくりや柔軟性の養成などが可能となり、効率よくトレーニングを進めることができます。
 ここでは、基本となる、3種類のSQを中心に進めています。

◆パートⅠ
 ハーフSQは、どの競技にも共通して実施するSQです。また、様々なSQや姿勢づくりの基本となります。
 浅いポジションで行うことから、高重量でのトレーニングが可能となり、脚を踏ん張る力の養成だけではなく、背筋強化、あるいは軸づくりを狙いとしています。
 その組み合わせとして、ここではBox跳び乗りJumpを採用しています。バーベルでのSQの直後に行うことで、(動作速度の)スローからクィックへの切り換えや、踏ん張った後に軽く力を抜く動きの転換などが主な狙いです。また、Jumpからの着地(柔らかく)にポイントを置くことで、足首や膝への衝撃を和らげるような身体の使い方を身につけることになり、ケガの予防に繋がります。
◆パートⅡ
 ワイドSQは、低い姿勢づくり、及び粘り強さの養成を目的としています。実際のプレーの中では、腰を落とすことでコンタクト時の安定性が高まることや地面を強く蹴る(押す)ことができ、動き出しの鋭さを生み出すことができます。
 さらに、セット間に四股を組み合わせることで、股関節の柔らかさをつくっていきます。 
◆パートⅢ
 スプリットSQは、片脚支持力の強化を目的としています。また、脚を前後に開く姿勢は、ピボット、ターン、ステップなどのバスケットのあらゆる動作の基本となります。
 それに続くセット間のエクササイズとして、パートⅠで行ったBox跳び乗りからの片脚着地を行います。急ストップ時の片脚での踏ん張り、柔らかい着地により衝撃を和らげる動きを身につけさせる狙いがあります。

※なお、初期導入段階では無理のない重量を選択し、安全なフォームで行うことを重視します。
また、プログラムは器具や環境により変わりますが、脚トレーニングを組む上で、跳び箱やJump Box(プライオBox)があると、Jumpやステップ、ターンなどの動作習得が可能となりますので、取り揃えておきたいものです。

 基本編は以上となりますが、今後はどのように脚トレーニングを発展させていくか、目的別に解説していきます。
 次回は、姿勢の低さ・粘り強さ養成をテーマとし、今回取り上げたワイドSQ以外でのアプローチや、バーベルだけではなく、ダンベルやディスクなどを組み合わせての強化方法について、解説します。

2017年7月13日
文責:平井 悠斗

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#2:野球選手のトレーニング Vol.1

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 先日よりスタートしました『Web講座』。
 第2回目は、鬼頭が担当します。(※鬼頭略歴は、スタッフ紹介ページより)

 テーマは、野球選手のトレーニングについて、シリーズで書いていきます。
 今回は、『投手の上体トレーニングの考え方と実践例(1)』 
をご紹介します。

■投手の上体トレーニング

 「野球のピッチャーに、ベンチ・プレスは必要ですか?」
 
 現場で、選手や指導者からよく聞かれる問いです。
 このような問いに対し、『必要な選手もいれば、必要ない選手もいる』というのが、指導経験に基づく答えです。つまり、個々の身体的特徴や競技レベル、鍛錬度などにより、その必要性は変わってくると言うことです。
 では、現場ではどのように分けているのか?まず、高校生・大学生・社会人(プロ)という世代別で考えていくことにしましょう。
 高校生については、肩・肘等に問題(怪我)を抱えている選手を除いては、原則「ベンチ・プレス」を行います。(※ベンチ・プレス=以下、BP)
 高校生の多くは、少なくとも入学時までに本格的なトレーニング経験がなく、基礎的な筋力・体力が備わっていない選手がほとんどです。したがって、トレーニングの基本原則である「全面性の原則」に則り、競技特性・ポジション特性よりも先に、まずはアスリートしての身体をつくっていく必要があります。
 そして、入学してから、半年、1年と定期的かつ継続的なトレーニングを実施する中で、段階的にポジション特性に応じたプログラムに発展させていきます。
 大学生については、その判断が分かれるところです。高校時のトレーニング経験や筋力・体力レベルにバラつきがあることが多く、選手個々の特徴をみながら、必要性を判断していきます。また、大学生は技術的に未完成の選手が多く、技術を身につける上で必要なトレーニングは何かという観点から考えることもあります。そのような場合は、監督やピッチング・コーチらと相談しながら、進めていくことが理想です。
 社会人(プロ)のレベルになると、当然ながら投手としてのレベルが高く、技術的に安定してきます。そのような選手については、まずは選手個々の感覚的な部分を尊重し、選択させるようにしています。
 また、BPと言っても、ハーフBP、フルBP、ダンベルBPなどその方法論は様々で、特に社会人まで投手として活躍してきた選手は、肩・肘に障害や不調を抱えている選手も多くいることから、その選手に合った方法を選択させることも大切です。

 さて、上記のように世代別の特徴を整理した上で、投手に対し、BPを中心として、上体トレーニングを組み立てる場合の原則となる考え方や基本パターン、実例を以下に記していくことにします。

 まず、プログラムを組む上でのPointを整理します。

①表裏のバランス
 
BP(表)に対し、ラット・プル・ダウンやベンチ・プル、ダンベル・ロウなど上背部(裏)のエクササイズをセットで組み合わせて進めます。また、その割合としては、「表1」に対し「裏2」を行うようなイメージがよいでしょう。投動作を考えると、BPのような押す動作よりも、引く動作やそれに関与する筋群を強化した方が良いからです。

②肩甲骨周りの可動性・柔軟性を確保
 投げる上で、肩甲骨の可動域が大きく、いわゆる「肩周りが柔らかい」状態が理想です。特に、BPを行う際は、肩甲骨を内転位に固定して行うことから、可動域が固定化されたり狭くならないように、セットごとに肩甲骨周りを意識的に動かします。

③胸椎伸展可動域(柔軟性)の確保
 ②の肩甲骨の可動性とも関係しますが、胸椎の伸展可動域、つまり胸が反れる状態を保つことが大切です。特に、伸展可動域が低下することで、胸が張れなくなることにより、腕のしなりが失われがちになります。そして、代償動作を誘発し、肩・肘の障害の要因の一つになることがあります。
 したがって、②③より、「強さと柔らかさ」を両立させることが、野球選手の上体トレーニングのキーワードであり、BPを導入する上でのPointと言えます。

④肩(前部)・肘へのストレスに注意

 リスクマネジメントの観点からBPを捉えると、肩前方部や肘周りに力学的ストレスがかかることから、BPそのものの必要性の有無にについて議論されることがあります。そのようなリスクを軽減させるための方法論として、ハーフBPやダンベルBPなどは有効な方法の一つと言えます。

 さて、上記のようなPointを踏まえた上で、実際のトレーニング・プログラム例をご紹介します。
 モデルは、高校生の投手とし、BPの初期導入段階を終え、本格的なトレーニングをスタートさせる段階での実践例です。
 今回は、写真のような「ハーフBP」を採用します。ハーフBPは、上述のように肩周りへの力学的ストレスを軽減させるだけでなく、可動域に制限をかけることで最も力を出しやすいポジションでのトレーニングを可能とします。それによって、高重量でのトレーニング感覚を養わせることができるため、まずは基礎的な筋力を高めたい高校生段階の選手にとっては有効な進め方です。

 

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HBP.jpg scapular push.JPG Lat.JPG shoulder bridge.JPG

 上記のような例は、上体トレーニングの中で、BPを軸に考えた場合の一例です。目的や時期、トレーニングに充てられる時間によっても、内容が変わってくることは言うまでもありません。

 今回取り上げた例についてまとめると、BPを軸に考えた場合、BPのみを集中的に行うのではなく、BPの「セット間」を利用するという発想で、同時並行的にプル系のエクササイズを組み入れることで、効率性を高めると共に、バランスよく強化することや野球選手(特に投手)の特異性を考慮することにもなります。

 一方で、上体トレーニングの中でBPをそれほど重視しない、あるいは採用しないという考え方もあります。その辺りについては、第2回目に解説していきます。

2017年7月2日
文責:鬼頭 祐介

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