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#6:バスケットボール選手の脚トレーニング Vol.2

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 今回は、ワイドSQを中心とした、姿勢の低さ・粘り強さの養成について、解説していきます。

 バスケットボールにおいて、姿勢の低さや粘り強さが必要なことは前回述べた通りです。
 低い姿勢になるメリットとして、以下のような点が挙げられます。
  1) 重心が落ちてコンタクトに強くなる
  2) 動き出しで、地面を強く押せる
  3) スタンスが広がり安定性が高まる

 低い姿勢を養成する為のトレーニングにおけるポイントは、「強さと柔らかさ」を両立させることです。
 
強さとは、低い姿勢をキープする筋力です。試合の終盤、疲労が溜まってくると、膝を深く曲げることができず、姿勢が高くなってしまう選手が多く見受けられます。姿勢が高くなると、低い姿勢をとる相手に対してコンタクト局面や動き出しで不利になります。また、それにより、バランスを崩しやすくなるため、結果的にケガに繋がる可能性も高まります。したがって、試合の終盤まで低い姿勢を維持し、集中力を切らさないようにする為には、トレーニングで粘り強さを養成しておく必要があります。
 
また、低い姿勢づくりにおいて、股関節の柔軟性も重要な要素です。柔軟性が高いほうが、よりリラックスした状態で姿勢をキープできるようになり、それにより腰や膝への負担を軽減させることにもなります。よって、特に腰痛や膝の傷害が多いバスケットボール選手にとっては、股関節の柔軟性を高めておくことは傷害予防の観点からも必須だと言えます。
 なお、筋力トレーニングと柔軟性との関係について、「筋力トレーニングを行うと柔軟性が損なわれる」という意見をいまだに耳にしますが、大きな可動域でトレーニングを行うことで、筋力と柔軟性を同時に高めることは可能です。また、ストレッチのみを単独で行うよりも、筋力トレーニングとストレッチを組み合わせて行った方が、より効率的に柔軟性を向上させることができます。

 以上のようなことを踏まえ、実践例を以下に紹介します。
 今回は、初級段階、つまり、第1回目の記事で取り上げたような、基本となるSQ種目のフォーム習得と基礎的な筋力強化段階を終え、目的を絞った本格的な強化に入る選手に対し、「低い姿勢づくり」にフォーカスしたプログラムの一例です。

6 program.JPGのサムネール画像

≪種目解説≫
 【パートⅠ】
①ワイドSQ

6 wsq.JPGのサムネール画像

 1) 足幅を左右に広くとって立ち、爪先・膝を外へ向ける。
 2) 上体を立てたまま、まっすぐしゃがむ。
 ≪Point≫
 ・爪先・膝を同じ方向に向ける。
 ・お尻を突き出し、上体を過度に前傾させない。

6 wsq by side.JPG

②四股

6 shiko.JPGのサムネール画像

 1) 足幅を広くとって構える。
 2) 片方の足を挙げ、バランスをとる。
 3) 腰を落とし低くしゃがむ。

③深伸脚

6 deep leg stretch.JPG
 ≪Point≫
 ・腰を深く落とす。
 ・胸を張り、上体を真っ直ぐ保つ。
 ・膝を曲げている側の踵も接地させる。
 ・曲げている膝を外に押し広げる。

パートⅠは、オーソドックスなプログラムです。
バーベルでの負荷をかけた後に、自体重負荷で動きのある四股を続けて行い、粘り強さを強化します。また、内転筋に負荷がかかった直後に深伸脚ストレッチを入れることで、同時に柔軟性向上を狙っています。

【パートⅡ】
①3/4 ワイドSQ

6 3qwsq.JPG

 ≪Point≫
 
・ワイドSQから左右どちらかの足を一足分前にずらす。
 ・上体は正面を向ける。


②四股ステップ
6 shiko step.JPG

6 shiko step by side.JPG

 1) ディスクを持って低く構える。
 2) 低い姿勢のまま、片方の足を前方へ小さくステップし、元の位置に戻す。
 ≪Point≫
 ・膝の屈伸を使い柔らかく着地させること。
 ・ステップ幅は一足分程度とし、腰の上下動を大きくする。


③四股ストレッチ

6 shiko stretch.JPG

 ≪Point≫
 ・両肘で膝を外へと押し広げる。

パートⅡは、よりバスケットボールに近い動きの種目を選んでいます。3/4ワイドSQは実際のディフェンスのスタンスのように足の位置を前後させることによって左右の負荷を変化させています。四股ステップでは、ピボットやステップ脚のトレーニングをイメージしています。

【パートⅢ】
①帯ダンベルSQ

6 dumbell shiko.JPG

 1) 腰に巻いた帯にダンベルを取り付けて台に乗る。
 
2) 膝をつま先と同じ方向に向けながらしゃがむ。

②ワイドSQ&カール

6 wsq carl.JPG

 1) ダンベルをもって中腰で構える。
 2) カールをすると同時に深くしゃがむ。

 ※バーベルの場合

6 wsq barbell carl.JPG


③股割り

6 matawari.JPG

 ≪Point≫
 ・上体はリラックスさせる。
 ・柔軟性が低い場合は、ベンチ台の上に座る、枕を入れるなど段階的に行う。

パートⅢで紹介している帯ダンベルSQは、腰痛選手向けのトレーニングでもあります。脊柱に対して、上方から負荷がかからないため、腰部に対して負荷がかからず、安全に強化できます。したがって、腰痛持ちの選手は、この帯ダンベルSQを脚強化のメイン種目にしてもよいでしょう。
また、例にあげた、ワイドSQ&カールのように、SQによる脚強化に加え、腕・肩のトレーニングを同時に行うことで、全身強化につなげることができます。

 なお、上記で説明してきたバーベル種目全てに共通するポイントは、「重さよりも深さ」を重視することです。したがって、深くしゃがめているか否かが、重量アップの基準になります。

 以上が、ワイドSQを中心としたプログラム例です。
 次回は、片脚支持力の強化を狙ったスプリットSQやそのバリエーションを解説します。

2017年9月10日
文責:平井 悠斗

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#5:野球選手のトレーニング Vol.2

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 野球選手のトレーニング、第1回目は「投手の上体トレーニング」について、ベンチ・プレスを強化の軸に据えた場合の実践例と考え方などを解説しました。
 今回は、投手の上体トレーニング 第2編として、背面の強化を中心に進めるパターンについて解説します。

■『投手の上体トレーニングの考え方と実践例(2):背面強化編』
 
前回の記事では、「投手にとって、ベンチ・プレスは必要か?」という切り口から、ベンチ・プレスをどのように導入・採用するのか、その基準となる考え方の整理から入り、ベンチ・プレスを行う際の原則を解説しました。
 今回は改めて、投手の上体トレーニングにおけるポイントの整理から入りますが、まずは投球動作そのものの特徴を確認しておきましょう。

pitching phase.JPG

 上の図は、投球動作を各局面(Phase)に分けた模式図です(出典:『肩 その機能と臨床 第4版』信原克哉.医学書院.2012/360頁 図9-17より ※図中の丸はここでは特に関係無し)。
 投球動作は、動作開始からステップ脚の膝が高く上がるところまでのWind up Phase、ステップ脚が完全に接地するまでの間で投球側の腕のテークバックからトップにかけての動作が伴うCocking Phase、ステップ脚が接地したのち投球側の肩関節が最大外旋位(腕がしなった状態)をとり、ボール・リリースに至るまでのAcceleration Phase、そして、ボール・リリース後、腕を振り切って投球動作が完了するまでのFollow-through Phase、以上の4つのPhaseに分けることができます。
 
投球動作は、各々の筋群が適切なタイミングで活動して力を生み出し、エネルギーを伝達し、ボールを加速させる全身運動です。特に下半身が主動となり、軸脚からステップ脚に体重移動させながらエネルギーを生み出し、体幹部を通じて、肩・肘、そして手先へと送られ、リリース時にその速度が最も速くなってボールに力を加えます。一連の動作の中で、固有の筋群だけが働く訳ではなく、その瞬間ごとに必要な筋群がタイミングよく連鎖的に働き、力を出しています。

 
そこで、それらを踏まえた上で、投手の上体トレーニングにおける強化Pointを整理していきましょう。
1)上背部の筋群:広背筋・大円筋・菱形筋・僧帽筋など
 背面には、脊柱の両サイドを走行する脊柱起立筋群という軸となる大筋群がありますが、ここでは上肢の動きに関与する筋群ということで限定的に考えていきます。

lat.JPG

 その中で広背筋が最も重要な役割を担います。上記の写真のように、起始部(筋肉の付着部)が腰背部(腰椎と骨盤)にあり、束のようになって上腕近位部(肩に近い側)の前側に停止(筋肉の付着部)します。つまり、身体の後ろ側から、胴体に沿いながら、捻じれるようにして前側についた状態になっています。
 この構造を頭に入れた上で、次の写真を見てみます。

mer pitch.JPG

 この写真は、Late Cocking PhaseからAcceleration Phaseに切り替わる、肩関節の最大外旋位、つまり腕が最も捻じられた(しなった)瞬間です。この時、広背筋、及び大胸筋はゴムが引き伸ばされたような状態となり、ボール・リリース時には伸ばされたゴムが解き放たれるようにして力を出すことになります。
 また一方、ボール・リリース後は、高速で振り下ろした腕を制御する必要が出てきます。その際にも、上背部の筋群は、その役割を担うことになります。したがって、強く・速く腕を振る為には、それに見合った強靭な上背部の力が必要になってきます。
 強化すべき上背部の筋群は、広背筋の他に、大円筋、菱形筋や僧帽筋などが挙げられます。

2)ローテ―タ―・カフ筋群:棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋
 
いわゆる、肩関節の「インナー・マッスル」と呼ばれる筋群で、肩関節(肩甲上腕関節)を安定化させる役割があります。特に、投球肩障害を防ぐ上で、強化が欠かせない筋群で、並行してトレーニングを行う必要があります。

3)上腕筋群:上腕二頭筋・上腕三頭筋
 
上腕の筋群の強化は見落とされがちですが、特に上腕二頭筋の長頭腱は肩甲骨(関節上結節)についており、ローテ―タ―・カフ筋群と共に、肩関節の安定に関与します。また、肘周りの障害を防ぐ上でも、上腕二頭筋・三頭筋、共に強化しておく必要があります。

4)前腕筋群:屈筋群・円回内筋
 
ボール・リリースの際、最後は指先でボールに力を加えることから、前腕の筋群の強化も欠かせません。また、肘周りの障害予防の観点からも、特に円回内筋などの肘関節内側部の筋群を強化しておくと良いでしょう。

5)柔軟性
 
第1回の記事でも記したように、肩甲骨の可動性を高め、胸椎の伸展可動域、また肩関節の内旋,外旋可動域、前腕部の可動域に至るまで、常に柔らかく、可動性の高い状態を維持することが投手の上体トレーニングを進める上で、重要なPointです。いわば、‟強くて柔らかい”“柔らかくて強い”上体をつくることが、強化のキーワードになります。

 
以上が、投手の上体トレーニングのPointです。このように、投球動作を踏まえて強化するPointを整理すると、前回取り上げたベンチ・プレスなど、上体前面の強化はそれほど重要ではないのでは?という議論になりがちです。それらに関する考え方の整理は、前回の記事で述べてありますので、再度ご確認頂くとして、ここでは、トレーニングの原理・原則の一つである「全面性の原則」に則り、表裏のバランスという観点から、必要であるということは繰り返し述べておきます。

 では、ここから実際のトレーニング例を紹介していきます。今回は、上体背面の強化に絞ったトレーニング・プログラムについてです。個々のエクササイズについては、写真をご参照頂き、またエクササイズの細かい解説はここでは割愛し別の機会に掲載することにします。

program.JPG chap a1.JPG chap a2.JPG chap a3.JPG chap b1.JPG chap b2.JPG

 

 【A】が強化、【B】が調整(柔軟性養成)のプログラム例です。先に述べた通り、強さと柔らかさを両立させることが重要となり【A】【B】の両方を実施すると良いでしょう。
 【A】プログラムに挙げたエクササイズの全てに共通するのは、大きく動かすことを意識することです。なお、その際に、肩周りが力まないようリラックスを心がけながら、必要に応じて反動をうまく使って挙上します。一見、矛盾する表現に聞こえますが、「力を抜きながら力を出す」ことは、投球動作においても大切なことであり、その感覚を体得していくことがトレーニングを行う意義の一つです。
 背面の強化は、下から上に引き上げたり、懸垂やラットプルダウン、アームプルのように引き寄せるようにしたり、また水平に引き付けたりと、様々な動作方向や角度でのエクササイズを織り交ぜると良いでしょう。
 また、アーム・カールのような腕のトレーニングは、単独で座って行うのではなく、写真のように脚の強化(スクワット動作)を絡めながら行うと効率的であり、なおかつ全身強化につなげることができます。
 【B】プログラムにおいては、「しなり」をつくることをテーマとした、反り(胸椎の伸展)系が中心のストレッチ・プログラムの一例です。上体が「しなる」ことは、良いボールを投げる上で必須条件であると同時に、投球障害肩を予防する上でチェック・ポイントの一つになります。

 以上のように、今回は投手の上体トレーニング第2編として、そのPointを整理した上で、背面強化中心のトレーニングを紹介しました。この他に、ローテ―タ―・カフの強化エクササイズや、前腕強化、またストレッチなど、より細かいトレーニングも欠かせません。それらは、次の機会にまた解説します。

2017年8月31日日
文責:鬼頭 祐介

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#4:上体強化:基礎 「ベンチ・プレス導入」2

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 スポーツ選手の上体強化:基礎「ベンチ・プレスの導入」について、前回に引き続き解説していきます。
 前回は、基礎段階におけるベンチ・プレスの効果と導入に際しての重要ポイント①(表1)を中心に述べました。今回話題にするのは、②バランスの取れた強化を図る、③肩関節の柔軟性を養成しながら進める、④初級段階にふさわしい重量設定を行う、の三項目についてです。

table1.JPG

 

②バランスの取れた強化を図る
1)上体筋群をバランス良く強化する
 ある特定の部位に偏るのではなく、上体筋群をまんべんなく鍛えることは、トレーニングの原理・原則の一つである「全面性の原則」に依るもので、まだ身体のできていない基礎段階の選手では、特にこのことが当てはまります。
 ベンチ・プレスによるトレーニングでは、大胸筋を中心に上体前面の筋群や上腕伸筋群を強化できますが、これに加え上背部、上腕屈筋群、肩上部などを鍛えるエクササイズをプログラムに組み込むことが望まれます(表2 初期プログラムの一例)。

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2)インナーマッスルとアウターマッスルの強化
 肩関節の深層筋群、いわゆるインナーマッスルと表層筋群・アウターマッスルをバランス良く強化していくこと。
 肩関節は自由度の大きな関節であり、様々な動きのエクササイズにより、表層から深層の筋群にいたるまで丹念に強化していくことで、ケガをしにくい丈夫な肩づくりにつながります。
 ボールを投げる、ラケットを振るなど、腕・肩を大きく動かすスポーツにとって、インナーマッスルの強化は、とりわけ重要な課題だと言えます。また、ラグビーなどのコンタクト競技においても、タックル時に肩の固定力を増すなど、表層大筋群の存在に隠れがちですが、機能的には重要な役割を担っています。
 一般的には、ベンチ・プレスでは、アウターマッスルの方が優位に強化されると言われています。インナーマッスル強化のためには、上腕を回旋(内外旋)させる、脇を締める等のインナーマッスルを刺激するエクササイズ(写真①②③)を合わせて行う必要があります。

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3)肩甲骨を滑らかに動かす、周囲の筋群をほぐす
 肩関節の動きには、肩甲骨の動きが密接に関与してきます。肩甲骨が滑らかに動けば、肩の可動範囲も大きくなります。反対に肩甲骨の動きが小さくなると、肩の可動範囲が狭くなります。先にあげたような、肩を大きく動かさなければならないスポーツとっては、肩の動きが制限されることがマイナスとなるのは、容易に想像できることかと思います。
 ベンチ・プレスの基本フォームにおいては、胸を張り、肩甲骨を寄せた姿勢(内転)を保つことが求められます(写真④)。これは、大胸筋をうまく使えるようにすること、そして肩を安定させ力を発揮させやすいポジションに固定することが必要となるからです。

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 したがって、ベンチ・プレスを行っている間じゅう、肩甲骨が内転状態で固定されることとなり、上体前面ばかりではなく、肩甲骨まわりの背中の筋肉も疲労してきます。トレーニング終了後、このまま何の対処もせずに放っておくと、蓄積疲労により肩甲骨まわりの筋肉が凝り固まってしまうことにもなりかねません。つまり、肩甲骨の動きが制限されるケースも出てくるわけです。それを防ぐためにも、周囲の筋肉をほぐし、肩甲骨の動きを引き出す調整エクササイズやストレッチ(写真⑤⑥⑦)が重要視されるのです。
 また、初期プログラム(表2)の強化種目として取り入れられている、④ベンチ・プル、⑤バック・プレスなども、肩甲骨の動きを良くする種目として有効となります。軽い重量で動作を大きく正確に行うことがポイントです。

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③肩関節の柔軟性を養成しながら進める
 ここで言う肩関節の柔軟性とは、肩を含めた上体全体の柔軟性を指しています。胸を開く、上体を反る、丸める、捻る、腕を上げる、回す等の動作に関連してくる筋肉の柔軟性向上と関節可動域の改善を図るトレーニングを同時に行っていきます。強さと柔らかさを兼ね備えた身体をつくることこそが、スポーツ選手のトレーンニングで求められるからです。
 具体的には、上体各部位のストレッチ(写真⑧⑨⑩)をはじめ、ダンベル・プル・オーバー(写真⑪)やダンベル・サーキュレーション・フライなど軽い重量で十分にストレッチを効かせながら行うエクササイズも効果的な手段となります。

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④初級段階にふさわしい重量設定を行う
 ベンチ・プレスに初めて取り組む際のトレーニング重量についてですが、重すぎる重量でも軽すぎる重量でも効果的ではありません。ベンチ・プレスの導入段階では、基本フォームと基礎技術の習得が第一に優先され、適正重量でトレーニングを行っていくことが求められます。フォームが固まっていないこの段階で、無理をして重量を上げて進めてしまうと、肩や胸のケガを引き起こしかねません。ましてや、第1回目のトレーニングからMax重量に挑戦するなどは避けるべきです。また一方で、フォーム習得の観点から、重量が軽いからと言って、安全かつ有効とも限りません。安全に正しいフォームを身に付ける為には、重すぎず軽すぎず、適度な重量で行うことがポイントになります。
 具体的には、1セットあたりの反復回数を6~10回程度として、できるだけ潰れないように進めていきます。重量設定の方法とトレーニングの進め方については、次の機会に詳細を述べていきたいと思います。

まとめ
 以上、基礎段階でのベンチ・プレスの導入に関して重要ポイントを見てきました。スポーツ選手のトレーニングの場合、ベンチ・プレス自体のフォームや進め方の習得とともに、バランスの取れた強化や柔軟性を向上させる取り組みが大切になってきます。そういった上体の総合強化が、ベンチ・プレスを伸ばすことになるとともに、より良い状態で専門競技に臨めるようになるからです。
 柔軟性向上や肩甲骨の動きなど、効果が見えづらく、見落とされがちなトレーニングですが、基礎段階からそれらへの取り組みを習慣化し、地道に強化を積み重ねていけば、後々に大きな差となって表れてきます。上体、特に肩関節周囲の柔軟性に着目し、その動きを滑らかにしておくことは、力強く柔らかい競技での動作習得を促し、パフォーマンス向上にプラスの影響を与える決定的要因の一つになるとも考えられます。

2017年8月31日
文責:大道 泉


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#3:バスケットボール選手の脚トレーニング Vol.1

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 『Web講座』 第3回目は、平井が担当します。(プロフィールは、こちらより)
 担当テーマは、バスケットボール選手のトレーニングについて、連載していく予定です。

■バスケットボール選手の脚トレーニング
 バスケットボール選手のトレーニングを考えるにあたり、まず1回目は「脚力」について取り上げたいと思います。
 バスケットボールにおける「脚力」を我々はどのように捉えておけばよいでしょうか?30年以上も前に書かれた吉井四郎氏の『バスケットボール指導全書』(全3巻/大修館書店.1986)にその記載があります。

 “プレーの経験年数と平行して発達するバスケットボールの基礎的な能力があるならば、(中略)私は、それは「脚力」であると考えている。”(全書1,p.11)
 “「脚力」とは、ストップし、方向転換し、ピボットする時に主として使用される筋力である。”(同,p.12)
 “ここで意味する「脚力」とは動きの変化するところの速さ、鋭さを求めることによって発達するものを意味し、動きの変化における「クイックネス」の基礎となる力を意味するものである。”(同p,13)

 『バスケットボール指導全書』は、コーチング理論や実践的な練習方法、戦術などが詳細に記載されており、指導者のバイブルと言っても過言ではありません。類書(写真1)においても「脚力」に関して様々に記述されていますが、『バスケットボール指導全書』以上の内容のものは見当たらないというのが私の感想です。

 

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 では現代において、「脚力」を鍛えるために現場ではどのようなアプローチがなされているのでしょうか。
 私は現在、母校である筑波大学の女子バスケットボール部(2014年〜現在)など、大学・高校の男女チームを指導していますが、これまでにも筑波大学男子バスケットボール部(2010年〜2015年)や社会人男子のトップチームを含め、様々なカテゴリーの選手指導に携わってきました。その中でも、特に小中学生を対象としたbjアカデミージュニアユース(2015年〜2017年)での約3年間の指導経験が大きな財産となっています。
 これらのチームの選手・指導者を通じて見聞きした限り、「脚力」の鍛え方は指導者によって異なっているようです。例えば、バスケットボールの練習そのもので鍛えたり、自体重負荷で強化したりする方法など、様々なアプローチが見られます。
 私のこれまでの指導経験から言うと、特にジュニア世代のうちから自体重負荷でのトレーニングを実施しておくことが重要だと考えています。なぜなら、この時期にトレーニングを習慣化し基本の姿勢を身につけておくことで、高校入学後にバーベルやダンベルを用いた本格的なトレーニングにスムースに移行できるというメリットがあるからです。また、この時期は走り込みによっても「脚力」が大きく向上するため、トレーニングとの相乗効果により、さらに飛躍的な伸びが期待できます。

 また、ケガの予防という観点からもトレーニングは必要だと考えられます。
 バスケットボールは競技特性上、攻守の切り替えが激しく、空中でのコンタクト局面も多いため、足関節や膝関節の傷害が多く発生する競技です。これらの傷害を予防するために、足関節や股関節の柔軟性向上、膝周囲の筋群の強化を行うことは必要不可欠です。
 さらに近年は、24秒クロックなどのルール改正に伴い試合展開が速くなり、運動強度や技術レベルが上がっています。鍛えられていない弱い身体に負荷の高い練習・試合を重ねていけば、傷害の発生リスクが高くなることは明らかです。したがって、トレーニングによって基礎筋力や柔軟性を高め、正しい動作を習得することで、ケガの予防に繋げられます。

 それでは、本格的なトレーニングを高校生から始めるにあたり、実際のトレーニング・プログラムを例にどのように進めていけばよいか、具体的に解説していきます。
 今回は、高校生1年生などトレーニングの初期段階をモデルとし、採用した種目の目的や進め方について説明します。

 

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 このプログラムの構成は、スクワット(以下SQ)とそのセット間に、自体重エクササイズやストレッチなどを組み合わせています。
 そのようにすることで、筋力強化と同時に、動きづくりや柔軟性の養成などが可能となり、効率よくトレーニングを進めることができます。
 ここでは、基本となる、3種類のSQを中心に進めています。

◆パートⅠ
 ハーフSQは、どの競技にも共通して実施するSQです。また、様々なSQや姿勢づくりの基本となります。
 浅いポジションで行うことから、高重量でのトレーニングが可能となり、脚を踏ん張る力の養成だけではなく、背筋強化、あるいは軸づくりを狙いとしています。
 その組み合わせとして、ここではBox跳び乗りJumpを採用しています。バーベルでのSQの直後に行うことで、(動作速度の)スローからクィックへの切り換えや、踏ん張った後に軽く力を抜く動きの転換などが主な狙いです。また、Jumpからの着地(柔らかく)にポイントを置くことで、足首や膝への衝撃を和らげるような身体の使い方を身につけることになり、ケガの予防に繋がります。
◆パートⅡ
 ワイドSQは、低い姿勢づくり、及び粘り強さの養成を目的としています。実際のプレーの中では、腰を落とすことでコンタクト時の安定性が高まることや地面を強く蹴る(押す)ことができ、動き出しの鋭さを生み出すことができます。
 さらに、セット間に四股を組み合わせることで、股関節の柔らかさをつくっていきます。 
◆パートⅢ
 スプリットSQは、片脚支持力の強化を目的としています。また、脚を前後に開く姿勢は、ピボット、ターン、ステップなどのバスケットのあらゆる動作の基本となります。
 それに続くセット間のエクササイズとして、パートⅠで行ったBox跳び乗りからの片脚着地を行います。急ストップ時の片脚での踏ん張り、柔らかい着地により衝撃を和らげる動きを身につけさせる狙いがあります。

※なお、初期導入段階では無理のない重量を選択し、安全なフォームで行うことを重視します。
また、プログラムは器具や環境により変わりますが、脚トレーニングを組む上で、跳び箱やJump Box(プライオBox)があると、Jumpやステップ、ターンなどの動作習得が可能となりますので、取り揃えておきたいものです。

 基本編は以上となりますが、今後はどのように脚トレーニングを発展させていくか、目的別に解説していきます。
 次回は、姿勢の低さ・粘り強さ養成をテーマとし、今回取り上げたワイドSQ以外でのアプローチや、バーベルだけではなく、ダンベルやディスクなどを組み合わせての強化方法について、解説します。

2017年7月13日
文責:平井 悠斗

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#2:野球選手のトレーニング Vol.1

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 先日よりスタートしました『Web講座』。
 第2回目は、鬼頭が担当します。(※鬼頭略歴は、スタッフ紹介ページより)

 テーマは、野球選手のトレーニングについて、シリーズで書いていきます。
 今回は、『投手の上体トレーニングの考え方と実践例(1)』 
をご紹介します。

■投手の上体トレーニング

 「野球のピッチャーに、ベンチ・プレスは必要ですか?」
 
 現場で、選手や指導者からよく聞かれる問いです。
 このような問いに対し、『必要な選手もいれば、必要ない選手もいる』というのが、指導経験に基づく答えです。つまり、個々の身体的特徴や競技レベル、鍛錬度などにより、その必要性は変わってくると言うことです。
 では、現場ではどのように分けているのか?まず、高校生・大学生・社会人(プロ)という世代別で考えていくことにしましょう。
 高校生については、肩・肘等に問題(怪我)を抱えている選手を除いては、原則「ベンチ・プレス」を行います。(※ベンチ・プレス=以下、BP)
 高校生の多くは、少なくとも入学時までに本格的なトレーニング経験がなく、基礎的な筋力・体力が備わっていない選手がほとんどです。したがって、トレーニングの基本原則である「全面性の原則」に則り、競技特性・ポジション特性よりも先に、まずはアスリートしての身体をつくっていく必要があります。
 そして、入学してから、半年、1年と定期的かつ継続的なトレーニングを実施する中で、段階的にポジション特性に応じたプログラムに発展させていきます。
 大学生については、その判断が分かれるところです。高校時のトレーニング経験や筋力・体力レベルにバラつきがあることが多く、選手個々の特徴をみながら、必要性を判断していきます。また、大学生は技術的に未完成の選手が多く、技術を身につける上で必要なトレーニングは何かという観点から考えることもあります。そのような場合は、監督やピッチング・コーチらと相談しながら、進めていくことが理想です。
 社会人(プロ)のレベルになると、当然ながら投手としてのレベルが高く、技術的に安定してきます。そのような選手については、まずは選手個々の感覚的な部分を尊重し、選択させるようにしています。
 また、BPと言っても、ハーフBP、フルBP、ダンベルBPなどその方法論は様々で、特に社会人まで投手として活躍してきた選手は、肩・肘に障害や不調を抱えている選手も多くいることから、その選手に合った方法を選択させることも大切です。

 さて、上記のように世代別の特徴を整理した上で、投手に対し、BPを中心として、上体トレーニングを組み立てる場合の原則となる考え方や基本パターン、実例を以下に記していくことにします。

 まず、プログラムを組む上でのPointを整理します。

①表裏のバランス
 
BP(表)に対し、ラット・プル・ダウンやベンチ・プル、ダンベル・ロウなど上背部(裏)のエクササイズをセットで組み合わせて進めます。また、その割合としては、「表1」に対し「裏2」を行うようなイメージがよいでしょう。投動作を考えると、BPのような押す動作よりも、引く動作やそれに関与する筋群を強化した方が良いからです。

②肩甲骨周りの可動性・柔軟性を確保
 投げる上で、肩甲骨の可動域が大きく、いわゆる「肩周りが柔らかい」状態が理想です。特に、BPを行う際は、肩甲骨を内転位に固定して行うことから、可動域が固定化されたり狭くならないように、セットごとに肩甲骨周りを意識的に動かします。

③胸椎伸展可動域(柔軟性)の確保
 ②の肩甲骨の可動性とも関係しますが、胸椎の伸展可動域、つまり胸が反れる状態を保つことが大切です。特に、伸展可動域が低下することで、胸が張れなくなることにより、腕のしなりが失われがちになります。そして、代償動作を誘発し、肩・肘の障害の要因の一つになることがあります。
 したがって、②③より、「強さと柔らかさ」を両立させることが、野球選手の上体トレーニングのキーワードであり、BPを導入する上でのPointと言えます。

④肩(前部)・肘へのストレスに注意

 リスクマネジメントの観点からBPを捉えると、肩前方部や肘周りに力学的ストレスがかかることから、BPそのものの必要性の有無にについて議論されることがあります。そのようなリスクを軽減させるための方法論として、ハーフBPやダンベルBPなどは有効な方法の一つと言えます。

 さて、上記のようなPointを踏まえた上で、実際のトレーニング・プログラム例をご紹介します。
 モデルは、高校生の投手とし、BPの初期導入段階を終え、本格的なトレーニングをスタートさせる段階での実践例です。
 今回は、写真のような「ハーフBP」を採用します。ハーフBPは、上述のように肩周りへの力学的ストレスを軽減させるだけでなく、可動域に制限をかけることで最も力を出しやすいポジションでのトレーニングを可能とします。それによって、高重量でのトレーニング感覚を養わせることができるため、まずは基礎的な筋力を高めたい高校生段階の選手にとっては有効な進め方です。

 

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HBP.jpg scapular push.JPG Lat.JPG shoulder bridge.JPG

 上記のような例は、上体トレーニングの中で、BPを軸に考えた場合の一例です。目的や時期、トレーニングに充てられる時間によっても、内容が変わってくることは言うまでもありません。

 今回取り上げた例についてまとめると、BPを軸に考えた場合、BPのみを集中的に行うのではなく、BPの「セット間」を利用するという発想で、同時並行的にプル系のエクササイズを組み入れることで、効率性を高めると共に、バランスよく強化することや野球選手(特に投手)の特異性を考慮することにもなります。

 一方で、上体トレーニングの中でBPをそれほど重視しない、あるいは採用しないという考え方もあります。その辺りについては、第2回目に解説していきます。

2017年7月2日
文責:鬼頭 祐介

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#1:上体強化:基礎 「ベンチ・プレス導入」1

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 このたび、『Web講座』というタイトルで、ストレングス・トレーニングに関する様々な情報を発信することになりました。
田内・大道を中心に、これまで約30年にわたり、工房インストラクターが現場で培ってきた、「スポーツ選手のためのストレングス・トレーニング」のノウ・ハウを、理論・実技の両面から実践に則した内容で掲載していきます。

 第1回目は、「スポーツ選手の上体強化「ベンチ・プレス導入」についての前編を、大道が担当致します。
(なお、各インストラクターの略歴については、「スタッフ紹介」ページよりご参照下さい。)

■スポーツ選手の上体強化:基礎 「ベンチ・プレスの導入
 競技スポーツが高度に発達している現代では、どのようなスポーツ種目においても、上体強化は必要不可欠で重要な課題と言えます。このことは、外国人選手に比べて上体が華奢な、多くの日本人選手に、特に当てはまることではないでしょうか。

 そういったなかで、今ではベンチ・プレスを積極的に行っている選手、チームが、数多く見られるようになってきました。
 ベンチ・プレス(以下、BP)は、スクワットやデッド・リフト(クリーン)とともに、筋力強化種目の中でビッグ・スリーと言われ(表1)、重要種目に位置付けられており、以下に述べるような効果が知られています。

Big3.png
  ◆上体筋群(大胸筋、三角筋等)の強化、発達
   ⇒様々なスポーツの土台となる身体づくり
   ⇒肩関節の強化
  ◆‘押す’という基本動作の強化
  ◆高重量負荷による神経系適応
   (運動単位の動員:増加と同期化、神経筋協応能の改善等)
  ◆飛躍的な重量アップがメンタル面にプラスの影響を及ぼし
    プレーへの自信につながる
 
 さらに、BPには、トレーニング刺激に対する反応性が高いという特徴があります。行ったトレーニング(回数×セット数、週間頻度など)に対する影響(筋肉痛も含めて)・効果が、他の上体エクササイズ(種目)に比べて出やすいと言うことです。
 これらの特徴は、トレーニング方法を学習していく上で有効となるため、フォーム習得が比較的容易であることも相まって、基礎段階でBPが重要種目として位置付けられ、積極的に取り組まれる理由ともなっています。
 以上述べてきたように、大きなトレーニング効果が得られるBPですが、その実施にあたっては、いくつかの注意すべきポイント、つまり、スポーツ選手にふさわしい取り組み方、進め方があります。
 今回は、スポーツ選手が取り組むBPの基礎段階において、どのように進めていけば大きな効果が得られるのかを詳しく解説していきます。また、それに続く発展段階へスムースに移行できるよう、基礎段階で何をしておくべきなのかについても触れておきます。

■初期段階の重要ポイント
 スポーツ選手が取り組む上体強化で、BPを導入するにあたって注意すべきポイントは以下の通りです。

 ①無理のない安全なフォームを身に付ける
  (特に肩関節と腰背部の障害予防)
 ②バランスの取れた強化を図る(表面と背面、内側と外側等)
 ③肩関節の柔軟性を養成しながら進める
 ④初級段階にふさわしい重量設定を行う

①無理のない安全なフォームを身に付ける
 BPの基本フォーム、および基礎リフティング・テクニックを身に付けるのは、当然のことながら、さらにその上で重視しなければならないのが、肩関節や腰背部への負担をできるだけ減らして取り組むことです(基本フォームについては、別途解説)。
 
スポーツ選手の場合、練習で既に肩や腰背部に大きな負担がかかっているケースが多く、さらにBPでそれらの部位に大きな負荷を継続的にかけ続けると、双方(練習とトレーニング)のダメージが蓄積し、肩や腰背部に痛みが生じることも考えられます。
 
こういったリスクを回避するために、肩の安全性を最優先させる必要があるスポーツ(野球選手、特にピッチャーなど)や胸の厚みが無く肩に負担のかかりやすい選手に対して、我々はハーフ・ベンチ・プレス(図1)を活用するメソッドを勧めています。図1は、トレーニング専用の枕をクッションとして用いて進めている実例です。

HBP.jpgのサムネール画像 
 
このようなハーフBPを用いることで、肩の可動域が制限され、バーを下した時の肘の位置が下がり過ぎずにトレーニングを行うことができます。BPにより肩の痛みを誘発する原因の一つに、バーを下した時の肘の位置が下がり過ぎて、胸や肩に過大なテンションがかかることがあげられます。十分にトレーニングを重ねた選手ならまだしも、まだ身体ができていない初級レベルの選手が過大な負荷に晒され過ぎると、肩や胸に痛みが生じるケースが出てくるわけです。

 また一方で、「可動域を大きく使ってトレーニングを行うのが原則だし、この方法だと効果的ではないのではないか」と指摘する方々もいらっしゃるかもしれません。
 確かに、この方法では可動域が出ていませんので、筋肉の発達という観点からすれば、フルBPよりも非効率的になるかもしれません。しかしながら、スポーツ選手が行うトレーニングでは、安全かつ効果的にトレーニングを進めることが最優先されるべきなので、多少時間がかかろうともリスクを回避する進め方が原則となります。
 なお、我々がこれまでに行ってきた指導経験上では、ハーフBPの効果は十分に認められています。例えば、ハーフBPを中心に一定期間取り組んだ結果、ハーフBPの拳上重量がアップ(10~20kg)するとともに、フルBPまでもが伸びた(2.5~10kg程度)、こういったケースを数多く見てきました。この間、フルBPによる強化はほとんど行っていなかったのにも関わらず、フルBPの記録も向上したわけです。
 また、より筋肥大を重視したい場合(例えば、ラグビーなどのコンタクト競技)などでは、ハーフBPに加えてプッシュ・アップやダンベル・ベンチ・プレスなど負荷強度の低い補強種目を組み合わせて行うことで、目的とする結果が得られるようにプログラムを組み立てると良いでしょう。
 もちろん、最初からフルBPを採用して強化する進め方もあります。また、ハーフBPを主体としながら、トレーニングに慣れ、ある程度の身体強化が図ってから、フルBPを段階的に導入していく流れもあります(図2)。

 

Fig.2.pngのサムネール画像
 次に、腰部に対する負担回避について述べておきます。一般的には、ベンチに背中と尻を着けてベンチから腰を浮かさないようにすることが基本フォームとされるかと思います。しかしながら、ここで重要になるのが、腰を浮かすか浮かさないではなく、しっかりと胸を張り、脚を踏ん張るフォームがつくれるかどうかです(図3)。その結果、体幹が自然な弓形となり、全身を使って大きな力が出せるようになります。このフォームで拳上する際に尻が少し浮いても何の問題もありません。むしろ、無理にお尻をベンチに着けようとすると、腰への負担が集中してしまうので、そちらの方が要注意です。 
Fig3.pngのサムネール画像
 図4は、ベンチの高さが膝と同じかそれより少し高い場合ですが、このケースで図3の様なフォームをつくろうとすると、今度は逆に腰部に対する負担が大きくなってしまうので避けるべきです。図5の様に脚の位置を高くするか、ベンチに両足を乗せて行う方が安全です。少し細かい話にはなりますが、使う器具によっては、腰部の負担を避ける適切なフォームが変わってくるので注意をしてください。

 

Fig.4.pngのサムネール画像  Fig.5.pngのサムネール画像

 
 以上、今回は初期段階の重要ポイントの中から①を中心に解説しました。次回は、後編として、②以降の実際の導入の流れを解説していく予定です。

2017年6月29日
文責:大道 泉

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